コーヒーとトネリコ

いいアイデアだと思って書いてみたら、先週上司に説教された内容そのままだった。めげずに生きていきたい

「麦茶はミネラル豊富」ではない。ミネラル豊富なのは海洋深層水のおかげ

ミネラル豊富なスペシャルドリンク

発端は、陸上部に所属している長男だった。

長男の陸上部では、夏季にスペシャルドリンクを作って部員が飲んでいる。

スペシャルドリンクとは、以下を混ぜたもの。

ちなみに全然おいしくないらしい。おいしくないのに飲んでいる理由は、指導の先生が怖いからと、栄養があるからの2つである。

それぞれが含んでいる栄養素については、たぶん以下を想定しているのだと思う。思う、というか長男が言っていたことをそのまま書く。

ここで私はうーんと思った。

青汁がビタミンなのはまあ納得がいく。水が水分で、クエン酸クエン酸なのは何人たりとも否定し難い。ビジネスパースン的に表現すると100%アグリーである。すべて醜い。いやちがう。完全同意ということだ。

問題は麦茶である。

麦茶はミネラルを含んでいる、という前提に基づいたセレクトだ。麦茶といえばミネラルでしょう。えっミネラル不足? 麦茶足りていないんじゃないの? くすくす。そんな嘲笑が後ろから聞こえてくる。クラスで俺だけがミネラル不足。皆が俺をバカにしている。道ですれ違った女子高生が俺を指さしてあざ笑った。そうに違いない。絶対そうだ。そんなセレクトだ。

果たして、麦茶はその期待に応えられているのだろうか? これが私が投げかけたい問いである。

もしかしたらここまで読んで、「えっ何言ってんの?麦茶はミネラル入ってるに決まっているでしょう」という感想を抱く方もいるかもしれない。そんな人はクラスでいつも中心的な存在だったかもしれない。スクールカーストで上位キープに成功してきたかもしれない。「●人ずつ組になって〜」と先生が言った途端、割り算の余りに感情移入してしまって涙目になる経験はなかったのかもしれない。

でも考えてほしい。それでも考えてほしい。麦茶の原料は麦だ。麦だ。大麦だ。ビールの原料だ。

ビールがミネラル豊富だと思って飲んでいる方、いますか?

ビアホールの宣伝文句に「ミネラルたっぷり」的なワードが入っていたのを見たことがないし聞いたこともない。ビールをよく飲むイギリス人はミネラルがたっぷり摂取できているので健康だ、というロジックにもお目にかかったことがない。

ちょっと、大麦に含まれるミネラルを調査してみよう。

日本精麦という会社のサイトから引用させていただきます。「大麦の特徴」という見出しの下にある文章です。

大麦は、食物繊維を多く含み、その含有量は白米の約10倍にもなります。 一般 には穀物が含む食物繊維は、不溶性(便通を良くするなど)の割合が高く、水溶性(血糖コレステロールの低下、血糖値の改善など)が低いのですが、大麦の場合、両方をバランス良く含んでいます。 また、大麦を食べるために皮を搗きますが、食物繊維は穀粒の中心まで存在していることもあってか、“大麦は食物繊維が多く含む”が、代表的な特徴となっているようです。 食物繊維の吸水性の高さから、大麦もよく水を吸い、この特徴を生かした利用方法も開発されています。

しかし、大麦にはパンを膨らますためのグルテンが含まれていないため、パンを焼いてもうまく膨らみません。

※小麦グルテンはグリアジンとグルテニンから形成していますが、大麦の場合、グリアジンではなくホルデインを成分としています。

大麦について

ごらんほらミネラルのミの字もありません。食物繊維のことばかり書いてあります。

大麦は「ミネラル豊富」ではない

ちなみにミネラルとは鉱物のことです。なんか、言葉の響き的に食物に含まれるイケてる栄養素というイメージがありますが、鉱物です。ウィキペディアによると、

地質学的作用により形成される、天然に産する一定の化学組成を有した無機質結晶質物質

です。有機農法とかオーガニックとか、そういう言葉と反対側に位置する、無機的な、言葉通り無機的な、味気のない、人間味のない、お高く止まった、融通の効かない、鉄面皮な、金属的な、化学的な、数式で表現される、それ以上でもそれ以下でもない、ある側面から捉えれば100%完璧にパーフェクトな化学物質です。

むしゃむしゃ食べられるものではありません。かといってガジガジかじってやるぜ!という感じで体内に取り入れられるものでもありません。たぶんミネラル側もそう思っているはずです。

食物に含まれる鉱物で最も一般的なのは、塩です。だいたいそうだと思います。塩とは、塩化ナトリウムです。塩化ナトリウムのナトリウムの部分が、鉱物です。たぶん。塩化の部分は、しょっぱくてすみませんという気持ちの表現です。

あとは、鉄も血液が酸素を運ぶのに必要。マグネシウムは下剤。あとカリウムとかもミネラルかな?

誰が麦茶=ミネラルというイメージを作ったのか?

ここまで読んできて、勘のいい方はもうお気づきになっているかもしれませんが、「麦茶はミネラル豊富というイメージを作ったのは伊藤園です。もしかしたらフジミネラル麦茶という可能性もあります。いったん伊藤園ということで話を進めます。

伊藤園の「健康ミネラル麦茶」が、麦茶=ミネラルというパブリックイメージの醸成を担保してきたわけです。担保ってどういう意味かわからず書いています。

もしかしたら、ですよ。ミネラル麦茶とは、「麦茶にはミネラルがたくさん入っているよ!」という意味ではなく、「ミネラルをたくさん添加した、添加物どっさりの麦茶です」という意味合いのネーミングである可能性が高くなってきました。

もう一度書きます。「ミネラル麦茶」という名前には、「私たちは、本来ミネラル分が含まれていない麦茶に、鉱物由来の成分を、自然の流儀に反して人為的に無理やり大麦側の了解を得ることなく人の手による添加物として加えています!」というネーミングである可能性が、若干ではありますが観測できる範囲内の事象として高くなっている可能性を指摘されても、はっきりと面と向かって「NO」とは言い切れない状態が生じているかもしれない、そんな噂を耳にしても違和感を感じない自分がいることに、少しだけ大人になった気分だという口実で自分を欺いているのかもしれません。

「麦茶に含まれるミネラル=ゼロ」by文部科学省

文部科学省の、食品成分についてのホームページから麦茶を検索してみました。ちなみにミネラルは、灰分(かいぶん)に相当します。

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はい出ました100グラム中0グラム。麦茶に含まれるミネラル分はゼロ。まったきゼロ。ゼロに何を書けてもゼロなのはご承知の通りなので、2リットル入りの麦茶に含まれるミネラル分もゼロ。浴槽いっぱいの麦茶に含まれるミネラル分はゼロ。もし海の水が全て麦茶だったとしても、そこに含まれるミネラル分はゼロなのです。

ここで、伊藤園サイドの意見にも耳を傾けてみましょう。

www.itoen.jp

伊藤園によると、ミネラルとは体の健康維持に必要な五大成分の一つだそうです。

五大成分とは

  1. タンパク質
  2. 炭水化物
  3. 脂質
  4. ビタミン
  5. ミネラル

を指します。

でもって伊藤園によるミネラルの定義は

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リン・マンガン・ナトリウムのことだそうです。ふーん。

ちなみに厚生労働省が定める、人体に必須なミネラル分は以下の通り。

  1. 亜鉛
  2. カリウム
  3. カルシウム
  4. クロム
  5. セレン
  6. ナトリウム
  7. マグネシウム
  8. マンガン
  9. モリブデン
  10. ヨウ素
  11. リン

けっこうありますね。

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そして、「冬の汗」と限定した場合のミネラルは、ナトリウム濃度のことを指すらしいです。緑の下線を引いた部分です。13種類もあるのに、ナトリウムに絞っちゃうんですね。絞っちゃうんだ。へー。

健康ミネラル麦茶の原材料と栄養成分はこちらです。

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ナトリウム濃度のことを言っているわりには、栄養成分にナトリウムはナッシングなんですね。なぜでしょうか。わかりません。原材料から推測すると、ミネラル源となっているのはどうやら飲用海洋深層水っぽいですね。添加物の表記はないので。深層水とはいえ、海の水はしょっぱいから塩がたくさん入っているはず。

ちなみに海洋深層水にミネラルが豊富なのは、海の深いところなので微生物が少なく、ミネラルが分解されにくいからだそうです。もともとのミネラルは何から来ているかと言うと、プランクトンなどの死骸なんですって。知らなきゃよかった。

ミネラル麦茶がミネラル豊富なのは、海洋深層水を使っているから

前述した「ミネラル麦茶は、ミネラルを人工的に添加した飲料である」という前提は崩れました。確認できたと思われる事実は以下のとおりです。

たくさん書いたから喉乾いた。健康ミネラルむぎ茶を飲もうと思います。リン、ナトリウム、マグネシウムを補給できます。ごくごく。