私の愛した情報整理アプリ(アウトライナー編)
目次
- アウトラインエディタ万歳
- ゼロ年代前半のアウトランエディタ
- WindowsCE×アウトラインエディタの組み合わせ
- コンテンツの設計図づくりにアウトラインエディタは欠かせない
- 2021年版アウトラインエディタのレビュー
- まずDynalistかWorkflowyを試す
アウトラインエディタ万歳
最初にアウトラインエディタや、アウトライン・プロセッサという言葉を耳にしたのはいつのことだろう。
たぶん2004年とか2005年とか、ゼロ年代前半だったように記憶している。パソコンのOSはWindowsXPだった。
最初は、会社でどこかに連絡する必要が出てきて、電話番号を探したのだけれどぜんぜんわからない、名刺入れを全部ひっくり返してもわからないという事態が生じて、「連絡先をデジタル化してデータとして管理しなければ!」と考えたことが発端だ。そこで、自分が持っている情報をデジタル化して一元管理しようとする意図が芽生えた。
別の記事でも書いたけれど、情報を一冊のノートにまとめる作戦が始まったのも同じ時期です。とにかく情報を管理したい!というニーズが沸き起こっていたのです、僕の中の深い部分に。
ノートにひたすら書き付けた文字は、残念ながら情報の断片でしかない。そこから何かを生み出そうとすると、情報をブレイクダウンして、ひとつひとつの情報を重み付けして、再構成し、ビルドアップして、あたらしい姿かたちを与えるという作業が必要になってくる。
そのためのツールを探していて巡り合ったのが、アウトライナー/アウトライン・プロセッサだ。
ゼロ年代前半のアウトランエディタ
どうやってその概念を知ったのかは今では定かではないが、当時使っていたツールを列挙すると、その輪郭だけでもわかるかもしれない。アウトライナーだけに。
- Nami2000
- StoryEditor
- WzMemo
- あうとら
- Tombo
メインで使っていたのはNami2000。いろいろなアウトライナーを探して、ここに行き着いたのだと思う。数年間はメインで使っていた。テキスト情報は全部ここに打ち込むという用法で、ファイルが2MBを超えたのは覚えている。全角換算で200万文字だ。あっていますかこの計算?
StoryEditorは、緑色の単行本のアイコンが懐かしい。Nami2000との争いに負けたのではないだろうか。
WzMemoは、WzEditorというエディタに付属しているメモアプリ。実態は文頭にカンマ「.」を置いてアウトラインを階層化するだけで、機能的にはWzEditorと同じだ。ただ、わざわざ有料のアプリ(たしかWzEditorは当時で5800円とかした。買い切りです)を購入してまで使おうと思ったのは、なにか理由があったと思いますが思い出せません。
WindowsCE×アウトラインエディタの組み合わせ
思い出しました。
イギリスのPsionNetBookProという、WindowsCE端末を購入したのがきっかけだ。
たぶんPalmのSony版であるClieの、TJ25か何かを購入したのをきっかけに、ぱっと起動してパッと入力できるデバイスを使いたい、手に入れたいという気持ちが盛り上がっていた時期がある。シグマリオン、ザウルスとかそういうやつ。あとMebiusっていうシンクライアントみたいなやつもあった。ちょっと前ならキングジムのPomeraですね。あんな感じのものがほしかったのです。
ただその気持ちが盛り上がったときにはもうシグマリオン3は売っていなかった。iPhoneもまだ出ていなかったし、モバイル向け端末のOSはWindowsCEかPalmOSか、という感じ。で、Clie(PalmOS搭載機)は所持していたので、なにかキーボード端末がほしかったんです。
そんなときにNetBookProが売りに出ていた。たしか定価よりはるかに安い値段で売りに出ていたと思う。すでに時代遅れになりつつあったデバイスに、「これは!」と飛びついたわけです。
で、WindowsCEで使えるアウトライナーはないかな、と探してWzEditorを見つけて購入した。そういう流れです。
ちなみに階層化テキストファイルというのが、当時の日本のアウトラインエディタの標準ファイル形式でした。日本語の文章で文頭に来ることが殆どないと思われる「.」、ドットを文頭に置き、その数で階層の深さを決定するという仕組みです。
なぜ、アウトラインエディタ/アウトライナー/アウトライン・プロセッサが必要だったか、そして今でも必要としているかというと、ひとつのコンテンツを作り上げていくのに、こんなに役立つツールはないと思っているからです。
コンテンツの設計図づくりにアウトラインエディタは欠かせない
コンテンツ(テキストや映像や画像やその合わせ技)を作ろうとすると、パーツだけ用意されても制作することはできません。どのパーツにどれくらいの意味をもたせてどこに配置するか、という設計図が必要になります。模型だったら組み立て説明書。イベントだったら企画書、映画や演劇なら台本。漫画や小説だって、具体的な表現の前には、一部が全体の中でどのような一を占めるのか、全体はどのように分割され構成されているのかという設計図が、必ず必要です。
その設計図を作るのに、アウトラインエディタ/アウトライナー/アウトライン・プロセッサが威力を発揮します。
情報を細かく分割していって、それぞれを見比べて構造化するときの選択肢はそれほど多くありません。
ひとつは、親子関係。Aという情報が、Bという情報を構成する要素の一部となる場合です。季節→冬、とか、そういう関係です。
もう一つは、兄弟関係。Aという情報が、Bという情報と並列になる場合です。冬と春、オーストラリアとニュージーランドとか、そういう関係です。兄弟なので、「どっちがお兄さんか」という観点があります。パラレルだけど、シリアルな場合もあるということですね。
あとは上記の2つの関係の組み合わせでつながる情報ですね。親戚か、遠縁か。
そして、この関係に当てはまらないもの、すなわち無関係の情報があります。
ブレイクダウンとビルドアップの作業を繰り返して、一つのコンテンツの概略=アウトラインができあがる、というわけです。たくさん集めた石をひとつずつ取り上げて、これはどこに置くか、割って分けることができないか、ほかの石とまとめてグループにできないか、という地道な作業ですが、アウトライナーならその作業を効率化できます。つまり情報の構造を可視化できる。
仕事でWindowsからMacに移行したこともあり、WzEditorやNami2000とは一時的に遠ざかりましたが、Windows環境+オフライン限定なら、この2つで問題なく対応できると考えています。
2021年版アウトラインエディタのレビュー
Workflowy
ウェブアプリ。シングルペイン(一つの画面に情報をまとめるタイプのアウトライン・プロセッサ)。全部を一つのツリーで処理させようとする原理主義的なところがある。それ以外の使い勝ってはたぶんDynalistとあまり変わらないと思う。あ、ブラウザでしか使えない。
Dynalist
クラウドアウトライナー。Workflowyより高機能。フォルダ分けもできる。Linuxアプリもある(が面倒なので使っていない)。Webアプリで使うぶんにはとてもよろしい。Workflowyと比較してこちらを選択。現在も使用中。脳みそ/ノートにある情報をまとめたり分割したり構造化したりブレイクダウンしたりビルドアップするのに最適。ただWorkflowyとの差は、好みの問題レベルです。
RoamResearch
見た目の挙動はアウトライン・プロセッサだが、デイリーノートを基準に展開する。ここ2年くらいイケてるアプリ扱いされている。
デフォルトの挙動がアウトライン・プロセッサで、短文の箇条書きを構造化するところがベース。そういう意味ではバレットジャーナルっぽいところもある。
グラフビューの元祖(みたいな感じ)。つまり各ノートの間のリンク、バックリンクやTODOの抽出など、情報を複数の角度から切り取ってみせるのに適しているアプリである。
デメリットは、ウェブアプリしかない。有料版しかないこと。
「文章」を書きたい自分からすると、なるべく情報を端的に表現したい向けなのかな、という印象がある。たとえば、「Call mom(ママに電話する)」という情報に、日付とカテゴリと重要度をつけるのに適している。バレットジャーナルのラピッドロギングのような考え方で情報を整理するアプリ。
AthensResearch
RoamResearchのオープンソース版。かつローカルで動く版。
たぶんローマより古いアテネ、という意味合いだと思う。
機能的にはRoam的な、グラフエディタがついて内部リンクできるアウトライナー。
Linux版はAppImage。データはよくわからんがJsonっぽいオリジナル拡張子のデータがつくられる。
Logseq
ローカルのファイルをクロームで開いてしまう恐ろしいアプリ。Roamからのインポートしかサポートしていないのがわかるように、Roamレスペクト。Firefoxが対応していない。文法はマークダウンとORGから選べる。
まずDynalistかWorkflowyを試す
Roamは、アウトラインエディタの枠組みに収まらないアプリ。でも見た目というか、入り口がアウトラインエディタっぽいのでここに入れました。続く2つはRoamレスペクトなアプリ。まずアウトラインエディタを触ってみたい人におすすめなのは、WorkflowyとDynalistですね。この2強です。好みでどっち使ってもいいと思います。
ローカルにファイル置いておきたい!という人ならNami2000。もう定番中の定番。お金を使わないと困る人はWZシリーズ。最近Mac版も出ました。秀丸やEmEditorという選択肢もあると思います。そのへんは実際に触ってみてから、だなーと思います。