コーヒーとトネリコ

いいアイデアだと思って書いてみたら、先週上司に説教された内容そのままだった。めげずに生きていきたい

私の前で「日本人は農耕民族、西洋人は狩猟民族」と言うな

なぜ言ってはいけないか。それは、私が以下のような内容で顔を真っ赤にして口角泡を飛ばして反論してしまうからです。

ここで、西洋人=ヨーロッパ人としましょう。民族、というセンシティブなキーワードがあるのですが、ヨーロッパ人の中でも、昔からヨーロッパ地域に住んでいた人たち、くらいのセグメントで捉えていただければ幸いです。

でもって、EUにおける農業生産高がGDPに占める割合は、2017年時点で約1.2%だそうです。 参考文献はこちら→https://www.alic.go.jp/content/001192362.pdf

これに対して日本はどうか。いろいろなデータがありますが、だいたい1%程度。少なくともEUより多い、ということはないようです。

つまり現時点では農業関連生産高という経済的な視点から比べると、日本もヨーロッパも大差ないです。ただし比較の対象をフランスやオランダに限ると、向こうのほうが圧倒的に農耕民族ということになります。

いやそんなことをいいたいのではない、そもそも狩猟だって農業の一部と言えるだろうという反論もあるかもしれませんので、次の論点に急ぎます。

日本で農業(ここでは定住して農耕することとします)が始まったのは縄文時代後期と言われています。縄文時代は1万6000年前から3000年前で、その終わり頃に稲作が大陸から伝わったわけです。それまでも雑穀やイモ類を栽培していたらしいですけれどね。

それに対して、ヨーロッパでの農業が始まったのは、最後の氷河期が終わった約1万年前以降。諸説あるようですが、紀元前5500年くらいにヨーロッパ全域に伝わったと言われているようです。つまりいまから7500年前くらい。

日欧を比較すると、どうかなーちょっとヨーロッパのほうが早いんじゃないの。日本人が狩猟採集中心だったころに、ヨーロッパではすでに農耕中心の暮らしが行われていた可能性が高いのではないでしょうか。つまり過去を振り返ると、タイトルとは逆の「日本人は狩猟民族、西洋人は農耕民族」が成り立つわけです。

うーんちょっとイメージと違うんだよね、そういうことを言いたいんじゃなくて、という人もいるでしょう。西洋人のほうが肉食ってそうじゃない?とか。

じゃ、その肉って狩猟で得たものなのでしょうか? 牛肉豚肉羊肉鶏肉、ぜんぶ人が育てるわけですよ。山野に鉄砲持って出かけて、仕留めてきた獲物ではないですよね。当たり前だけど、そんなことするより牧場作って育てたほうが手間も時間もかからない。ご存知かどうかわかりませんが、牧畜ってやつです。仮に西洋人のほうが肉を食べる量が日本人より多かったとしても、狩猟民族という言い方はおかしい。牧畜民族とか畜産民族だったら成り立つかもしれませんが。

ちなみに、農業生産高に占める畜産の割合は、日本が約39%、EUが約48%となっております(GEMINI調べ)。この差を捉えて「日本人は農耕民族、西洋人は牧畜民族/畜産民族」と言えなくもないですが、そこまで大きな差ではないように思います。比較対象がモンゴルだったりすると、農業のうち9割以上が牧畜なので、牧畜民族という例えが成り立ちますけどね。

そもそも日本人の先祖である新モンゴロイドは、氷河期にマンモス狩っていたわけです。バイカル湖近辺とかで。ご先祖様が日本列島に移ってきたのだって、たぶんこっちのほうが暮らしやすいと思ったからでしょう。バイカル湖付近の獲物を全部捕り尽くして。定住農耕していなかった当時、暮らしやすいといえば狩りの獲物が豊富な土地だ。つまり日本人の源流は、狩猟の対象を求めてやってきた生粋の狩猟民族ですよ。決して転勤を言い渡されたからではないと思います。

というわけで、「日本人は農耕民族、西洋人は狩猟民族」というフレーズには、農耕が伝わった時間差についての思慮が足りず、かつ過去のハンティングスピリットを忘れてしまった残念な人が、それでもなんとなく含蓄のあることを言ってみたい、という成功率の低いチャレンジの結果ですので、この記事の冒頭とは異なる結論となりますが、これまで書いてきたような事実をもとに口角泡を飛ばして反論するのではなく、口角を上げて笑みを浮かべながら暖かい目で優しく見守ってあげるべきだと思います。